【最終回感想・12:水星の魔女】「機動戦士ガンダム 水星の魔女」

 2023/09/15 Fri

水星の魔女

水星の魔女

「魔女」の定義

以前、「第21話:今、できることを」の感想としても書いたのですが、
この作品における「魔女」の定義が、最終回を経た今でも、よくわからない。
「ガンダムに乗っていたり、GUNDに関わっていたりする人々」、
というゆるっとした解釈でいいのかな?

GUND自体が過去に強引に「悪しきもの」として抹消されたり、
ガンダムも禁忌のMSとして扱われたりしているし、
ヴァナディース機関に所属していた人々などは、
嫌悪の対象として「魔女」と呼ばれているのですよね。
スレッタも、ランブルリング後に、例のジュペジュくん(合掌)のお仲間から
直接そう言われているし(第16話)。

でも、スレッタはそんな現況を、それこそオセロの石をひっくり返すように、
「呪い」から「祝福」へと反転させる役割を負っているのかな、
と思っていました。
「みんなに教えてあげて、ガンダムはみんなのそばにいていいものだって」
というのは、スレッタを誘導するためのプロスペラの台詞ですが(第8話)、
それすら含めて、GUNDによって希望ある未来へと導いていく「善き魔女」として、
スレッタは象徴的な存在になっていくのかなぁ、そうなってほしいなぁ、と。

なので、キャリバーンと和解したりヒトとMSとして「共闘」したりはせず、
従来のパイロットと同じように生命の危機に冒されながら搭乗して、
手近なところにいたガンダム4機を謎のシュワシュワで分解(?)して、
「とりあえず、目の前からは片付けました!」とされても、
見ているこちらとしては戸惑ってしまったんだよねぇ。

ちょっと、私の夢いっぱいな願望を込めすぎていたかも知れないけれど、
個人的には、スレッタには、ぜひ、肯定的な意味合いを持って、
自ら「魔女」と名乗ってくれることを期待していました。
ちょっと、過去記事(「第21話:今、できることを」)から引用しますね。
「化け物」キャリバーンと仲良くなって、乗りこなしたスレッタちゃんには、
いつかのソフィみたいに
「私はスレッタ・マーキュリー、『水星の魔女』です!」
って高らかに宣言してほしい。
GUND技術の可能性と、データストームによって失われたたくさんの生命と、
魔女と呼ばれた人々のこと、そして自分の出自などなど、
いろいろな過去を全部ひっくるめて受け止めて、
それでも自分自身の存在とこれからを肯定して、あえてそう名乗ってほしい。

タイトル回収って、かっこいいじゃん。
そんで、初期OPが流れたりしたらさらに胸アツじゃん。
自己肯定感が低くて、誰かに依存しがちだった子が、
自分が何者かを考えて、何をすべきか考えて、一歩を踏み出す時って、
最高にかっこいいじゃん。
「僕は、エヴァンゲリオン初号機パイロット、碇シンジです!」
って、別作品の名台詞だけれど、みんなも好きでしょ?
やってほしかったなぁ、こういうの。
見てみたかったなぁ……。

求む!「水星編」

さっきのを書いていて思い出したけれど、そういえば、本編中では、
水星を舞台にしたエピソードが1つもないままでしたよね。
「スレッタの里帰りイベントとか、やるのかも」とか、
「ラストバトルは水星でやるのかも」とか、
ネット上ではあれこれ予想も飛び交っていましたが、
ついに実現されませんでした。

水星での暮らしがどんなものだったのかは、一応、
プロスペラの「水星の環境は過酷です」(第2話)や、
第4話のスレッタ&ミオリネの会話などで語られていますが、
せめて回想シーンとか、一瞬でもカットを挟むとかして、
映像でも見せてほしかったなぁ、と思っています。
エリィちゃんによるパーメット根性焼き(第18)にて、
赤ちゃんスレッタなどがちらっと映ったりしましたが、
全て格納庫(?)での記憶で、情報が足りなさすぎて……。

本編以外では、OPテーマ「祝福」の原作小説である「ゆりかごの星」でも、
エアリアル視点での水星の日々が綴られていますが、
あの小説内の「僕」と、本編内の「エアリアル(=エリクト)」が、
私の中ではどうしても印象が異なっていて、
実は未だにちょっと疑ってしまっているんだよねー……。

ちなみに、個人的には
「プロスペラがエリィと信じている存在は、エアリアルAIがエリィを模倣したもの。
 エリィはもう、どこにもいない」
という説が、救いがなくて好きでした(鬼)。

おっと、水星に話を戻します。
「スレッタが母親に洗脳されているのでは」という展開になった頃には、
「実は、スレッタが育ったのは地球上の特殊な施設や地下などで、
 水星ではなかったのでは?」
「老人たちに虐げられていたというのも、
 自分とエアリアルしか味方がいないと思わせるために、
 母親に意識を操作されていただけでは?」
という意見も多くみられて、私もどきどきしていました。

「スレッタの故郷は、実は水星ではなく地球でした!」というのは、
看板というか作品タイトルとして「水星の魔女」を掲げている以上、
さすがにないよな、とは思っていました。
そんなオチだったら、ガンダムシリーズ末代まで語り継がれてしまうだろうし。
でもやっぱり、せめて、第4話に出てきた「お守り&寄せ書き」を、
実物というか映像でも見せてほしかったなぁ、と思う。
故郷を発つ前にみんなで撮った写真、とか、そういうのでもよかったのに。

第16話で、ミオリネからシン・セー開発公社の調査を許可されたフェンさんが、
探偵役として水星の実態を暴いていくのかな、とか、
ここからスレッタの出自も明らかになっていくのかな、とか、
いろいろ想像していたのですが、そういえばこの線もなかったですね。
この繋がりは、宇宙議会連合がベルメリアに辿り着くためのもので(第18話)、
もともと本編中では、水星を登場させる予定はなかったのかなぁ。

もしかしたら、学園フロントから水星まで、とんでもなく遠くて、
行くだけでもめちゃくちゃ日数かかる設定、とか?
作中何度も、ド田舎と表現されているので、その可能性も大だけれど、
あまりにも謎に包まれた存在のまま終わってしまったのが残念です。

水星の魔女

「水星の魔女」という作品タイトルは、文字数が短めでビシッと決まっているし、
「THE WITCH FROM MERCURY」という英文表記も、語感がとても美しい。
タイトルロゴもおしゃれで好きです。

でも、物語中における「魔女」の定義が曖昧で、
水星の実態もよくわからないままで、
さらには、作品のテーマについても、
全24話(+プロローグ)をかけて何を伝えたかったのか、
私にはいまいち汲み取れなくて、……。

スレッタ・マーキュリーという主人公に焦点を絞ってみても、
特に第2シーズンでは、何を考えているのか、何を感じているのか、
視聴者にはどうにもわかりづらくて、ちょっと不親切だったとも思います。

このように、これら4つの要素が全て「よくわからない」という
一応完結したにしては稀有なケースの足し算(いや、掛け算?)の結果、
「『水星の魔女』は全体的に、何だかよくわからなかったなぁ」
という印象に落ち着いてしまいました。
あくまで、個人の感想だけれども。

一方で、最終回からこれだけ日が経っても、
私はあの世界やそこに生きるキャラクターのことを捨ておけないので、
そういう意味でも、とんでもない作品だなぁ、と……。
たぶん、普段の私が外から私を見たら
「そんなに苦しいなら、さっさと離れればいいのに」
とか言っちゃってたと思うのに、ねぇ。

嫌いになったわけじゃないんだ。
むしろ、こんなに大好きなんだ。
序盤はストレスなく夢中になれたし、第15話の一番星を忘れられないし、
「水魔女は、やればできる子」と思ってしまうんだ。
これこそが、呪いなのかなぁ。
だとしたら、いつか祝福に変えてほしい。変えたい。

……と、〆のようなことを書きかけていたのですが、
あと少し、やりたいことがあるんだった!
というわけで、たぶんまた次回もあると思います。
よろしければ、もうしばらくお付き合い下さいませ。

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