【最終回感想・9:ライバル枠としてのグエル】「機動戦士ガンダム 水星の魔女」

 2023/08/20 Sun

水星の魔女

水星の魔女 先日、田頭さんが公開して下さったラフ絵のおかげで、
水魔女最終回で受けた深い悲しみからは、だいぶ解放されたように思います。
改めて、ありがとうございました!

あの日から1ヶ月以上も経っているのに、いつまでもぐずぐずと書いていて、
こんなふうに考えているの、もう自分だけかな、
とこっそり弱気になりつつ毎回恐る恐る UP しているのですが、
この「最終回感想」シリーズ、意外と読まれているようでびっくりです。
私の書いたことに共感して下さったかどうかはともかく、
同じように受け入れられずに苦しんでいる方は、思っていたより多いのかな。

そんなこんなで、今回のテーマは「ライバル枠としてのグエル」です。
彼については各話感想でもこの最終回感想でも
しょっちゅうわぁきゃあ叫んでいましたが、まだ足りないよ。
言いたいこと、いっぱいあるから、全部吐き出すぞ!
内容的には、これまで散々ネット上で他の方々にも語り尽くされたものだけれど、
自分の口からも改めて語りたいんだ!

あと、いつものことながら、私はグエルくん推しかつグエスレ推しなので、
どうかご了承くださいね。

スレッタとの対比と相似

「スレッタ&グエルはアムロ&シャアの関係」とか
「グエルは『赤い機体』に乗るライバル枠」というのは当初から言われていました。
ガンダム作品はこれまでそれなりに楽しんできたものの(→視聴履歴)
特に詳しいわけでもないライト層なので、
「アムロ&シャアの関係」というのは、その深いところまでは、
正直に言うと、よくわかりません。
でも、「ライバル枠」というのは序盤から明確に描写されていたと思います。
彼らの軌跡や設定について、その共通点や対比などを整理してみますね。
  • 元ホルダー / 現ホルダー
  • 大企業の御曹司 / 辺境の田舎者
  • 家族は男性のみ(父・弟) / 家族は女性のみ(母・姉?)
  • 姓の異なるきょうだいがいる(ラウダ・ニール / エリクト・サマヤ)
  • 2人兄弟の長男 / 13人姉妹(?)の末妹
  • 疑似的父親(オルコット)……左腕が義手・息子を亡くした父 /
    母親(プロスペラ)……右腕が義手・娘を(身体的に)亡くした母
  • 家族のことが大好き&大切
  • プラント・クエタ(付近)にて初めて殺人の罪を犯す(第12話)
  • クワイエット・ゼロ(付近)にてきょうだい喧嘩(第23話)

あと、ちょっとこじつけっぽいかもしれないけれど、
第10〜12話における小ネタ的なものも、ついでに書き出しておきます。
  • ヘルメット着用(ボブ / 義足運用試験)
  • ソフィからの愛称(?)(お兄さん / お姉ちゃん)

物語の主軸から遠ざけられた「ライバル」

同じ日に同じ場所(広義)で初めて人を殺めて、
親を慕う気持ちをお互いに共有しているグエルくんが、
ミオリネに「人殺し」と拒絶されて、いつかは母と対峙するであろうスレッタを
支えたり寄り添ったり、してくれるんだろうな、
と第2シーズン待機中ずっと思っていたのですが、そういう展開にはならなくて、
わりと本気で驚きました……、っていうか未だにこの点はびっくりしています。
これでもか、ってくらい相似&対比を徹底された設定&描写は、
この終盤のための布石だと思い込んでいたので。

物語開幕直後から、
本来ならば主人公であるスレッタ自身が経験するはずの過酷な経験を
ほとんど全てグエルくんが肩代わりしてきたのは、
それをスレッタと共有して、彼女と彼自身の癒しと成長の糧にするため、
……じゃなかったのー!?

グエルくんからスレッタへの恋愛感情については、
企画当初からあったものなのか、それとも途中で変更・追加されたのか、
現時点では特に言及されていないようなので不明ですが、
そういうのを抜きにしても、ここで彼らがお互いの罪について語り合うのは
物語の構成上、必要不可欠だったと思うのになぁ。

第17話の告白シーンで、スレッタからグエルくんに対しての心の距離は
それまでよりもずっと近くなったはずだから、
自分の罪と向き合ったり、母の言葉に疑問を持ったりするきっかけとして、
もう一度グエルくんと静かに話せる機会があれば、と思っていたのに、ねぇ。
いやー、ほんとうに、不思議でならないよ……。

グエルくんは「主人公のライバル枠」として用意されたキャラだと思われるけれど、
ここで2人が人殺し・親殺しの経験を共有しなかったために、
グエル・ジェタークというキャラが
「水星の魔女」という物語から半ば独立してしまって、
はっきりいって、「ライバル枠」としても不完全な立ち位置になったよね。
「最終回感想・2:物語には報いあれ」あたりでも繰り返し語っていますが、
せめてラストで共闘させて、
自他共に認めるライバル関係・信頼関係を見せてほしかったなぁ。

スレッタだけじゃなくて、ミオリネとだって、
地球の現状やアーシアンのテロリストのこと、
もっとちゃんと、情報共有できていたら、
作中での展開も、私たち視聴者が受ける印象も、全然違っていたかもしれないのに。
つくづく、脚本がグエルくんの存在と経験を活かしきれていないなぁ、
などと思ってしまいます……。

こんなに主軸に絡まないなら、グエルくん、
学園から出奔せずに、地球寮に入ったり株ガンに入社してくれたらよかったのに。
リリッケちゃん以外は敬称も敬語も使わない、フラットな間柄だから、
そういう集団の中である意味雑に扱われた方が、
きっとグエルくん、素の自分を出して、楽になれたよ。
ボブ化とまではいかなくても、本来の穏やかで優しい男の子に戻れたはず。

グエルくんの父殺しも、スレッタの人間潰しも、
ただショッキングな展開で話題を呼ぶためのもので、
そこから生まれる葛藤や、浮き彫りになった問題の克服を
きちんと描写する気がなかったのなら、
最初から、そんなもの、なくてよかったよ。
お話が小さくまとまっても、物語の筋がちゃんと通ってて、
主人公やその周囲が成長していく様を見届けられた方が、ずっとよかった。

…………。
……………………。
あっ、でも、そうなると、第15話も必然的に消滅しちゃう……?
…………。
いや、でも、グエルくんにだけ辛い目に遭わせるのは……。
あー、でもやっぱあのエピソードはほしい! オルコットさんも好きィィ!
えーん、どうしたらいいんだよー!!(混乱)

いや、でも、真面目な話、あの一番星のエピソードだけで、
水魔女全体の評価が保たれているように思えてなりません。
あれがきっかけでグエルくんを見直した、って人もきっといると思うし。
(シーズン1の頃って、グエルくんのこと叩いてる人、多かった気がする)
(あの直情的な性格&衝動的な行動は、それ自体はただの個性で
 長所でも短所でもあると思っているけれど、
 当時は否定する意見が目立っていたような印象)

親への思慕と自我の確立

スレッタが母親に洗脳されているっぽい、というのが明るみになった頃、
第5話でグエルくんがエランさん(4号)に
「こいつ(スレッタ)に何をした!」と怒りをぶつけたあの台詞を、
いつかプロスペラに言うのでは、とか、言ってほしい、
といったつぶやきを見かけたことがありますが、
そういえば、グエルくんって、プロスペラに直接ものを言ったシーンって
なかったですよねぇ。

スレッタが自身と母親との関係を見直す時に、
「親を大切に想うこと」と「その言葉に疑問を持つ・反発すること」は
けっして矛盾するわけではない、ってことを、
まさにそれを体現してきたグエルが教えてくれるんだろうな、
とずっと期待していたので、
ここも、特に語り合うこともなく終わってしまったのが残念です。
「脚本がグエルくんの存在と経験を活かしきれていない」と感じた、
最大のポイントその2、ですね。

これまで散々、スレッタとの相似と対比をさせられてきたグエルくんが
父殺しをしてしまったことで、
いずれはスレッタにも、それ相応の過酷な運命が待ち構えているのかな、
とこっそり覚悟を決めていました。
「もしかして、最終決戦は
 『スレッタ in シュバルゼッテ VS プロスペラ in エアリアル(エリィ)』
 になっちゃうのかなぁ」
と、不安半分&期待半分でイメージトレーニングまでして備えていたのですが、
このへんの問題も、スレッタの母親に対する「全てを肯定します」で
あっけなく穏便に済まされてしまって、モヤモヤするんだよねぇ。
なーんも解決しとらんやんけ! と思ってしまう……。

まぁ、グエルくん自身も、「俺と父さんを繋ぐもの」である会社を
一生懸命に立て直すことに必死で、それ自体は心から応援したいけれど、
ある意味、父親の亡霊から逃れられなくなっているようにも見えて、
ラウダくん、ちゃんと支えてあげて! って心配なんだけれども。
ただ、社名は昔と同じでも、従業員は大部分が入れ替わったか、
もしくはだいぶ削減されて、ある意味身軽な会社になった可能性もあります
(エピローグのエラン様との会話などから推測)。
だとしたら、今まさに、グエルくん自身が決めた道へ
業種なども含めて大きく方向転換している最中なのかな、
だからこそ、立て直しに時間がかかっているのかな、
となるべく前向きに考えることにしています。

いつか、それを成し得ることができたら、
その時ようやく、健全な意味で、ほんとうの意味で、
親離れ&独り立ちができたことになるのかな。

うーん、それにしても、こうやって改めて書き出してみると、
スレッタの成長において、グエルくんとの接触というか話し合いって、
やっぱりもっと必要だったと思うんだよなぁ。
罪と償い、そして親との向き合い方の2つの問題でサポートする、
そのための「ライバル」でもあったと思うのに、
最終話ですら不自然に遠ざけられていて、何か腹立ってきちゃったぞ!

最終的にスレミオに着地するために、この2人を接触させたくなかったのかな?
まぁ、そうね、確かにこの2人、ソウルメイトだから、
ちょっと話しただけで相互理解が深まってビッグ・バンを起こしてしまう……。
宇宙を創生してしまう……。
それを上回るスレミオ描写をするための尺が、足りなかったとか?
いや、でも、全2クールって最初から決まっていたはずだし、
そんなもん最初からペース配分しとりゃいいだけの話で……。
スレッタだけじゃなく、ミオリネも、
グエルの経験をもっとちゃんと共有すれば、
もっとずっとかっこいい女に成長する可能性があったのに、可哀想だよ。

償いとしての教育事業

さっきの「親への思慕と自我の確立」でも書いた、
ジェターク社の立て直しに関する追記です。

本編中の描写のみを素直に信じるなら、
スレッタがミオリネを守るためにテロリストを潰してしまったことと、
直接ではないもののソフィを死に至らしめてしまったこと、
そしてまた、グエルくんが父を殺めてしまったことは、
3年後のエピローグの時点でも、お互いに知らないまま、なのですよね。

一応、スレッタは自分の罪について自覚したことは
第22話のミオリネとの対話でちらりと語れているのですが、
「自分がやったことは取り戻せない」と考えるまでに止まっていて、
あの経験から自身がどう変わったのか、
というのが結局何だかよくわからない……。

そしてまた、グエルくんも、シャディクやラウダくんには
父殺しの件が伝わっているのが明確に描写されましたが、
対外的・社会的に公表されたかについては謎のままです。

ここらへんについては「最終回感想・6:罪と罰」でも語っていますが、
2人がいつか、お互いの罪を打ち明けて、
そもそもテロを仕掛けたシャディクやシャディク隊の生い立ちや、
組織に使い潰されていた地球の魔女たちの存在、
そしてアーシアンの現状や格差問題についても関心を広げることができたら、
スレッタの「水星に学校を作りたい」という夢と
グエルくんの「会社を守りたい」という目標が、
「宇宙と地球、双方の、教育事業の発展」に重なっていくのかもしれないな、
と期待を込めて想像しています。
語られていない3年間のどこかで、そうなっていたらいいな、という願望ですが。

スレッタの夢として語られた「水星に学校を作りたい」は、
作中でそれが明かされた直後から、
「子どものいない水星でそんなものを建てても意味がない」とか
「母親にそう思わされているだけでは」とか
「スレッタの幼さや未熟さを暗示している」とか、
けっこう批判的にとらえられていたように思います。

私も、これについては、例えば
「映画が好きだから映画館を作りたい、でも映画を作りたいわけじゃない」
みたいに考えていて、
スレッタ自身が学校に憧れていたことの表れであり、
教育者になりたいと思っていたわけではない、のかな、と思います。

でも、実際に自分がアスティカシアの生徒になって、
わずかな時間でも学園生活を送った経験から
「やっぱり、学校って楽しい!」と思えたなら、
そして、ささやかな日常やごくありふれた幸せに憧れていた
ソフィたちのことを思い出してくれたなら、
ただのハコとしてだけの「学校建設」ではなく、
「教育施設の復興・発展」という分野にも夢が広がっていくのでは?

そして、それはグエルくんにとっても同じで、
アカデミー出身のシャディクたちのことや
学校へ行きたいと頼ってきたセドとの出会い、
そして地球の現状を目の当たりにした経験から、
「まずは教育の分野で、スペーシアンとアーシアンの格差をなくしたい」
と彼なりに考え始めるんじゃないのかなぁ。

父親から引き継いだ会社のことはもちろん大事だし、
彼自身、MSオタク的な気質もあると思うので、
MS事業から完全に手を引くことはないと思うけれど、
アスティカシアの復興に尽力したことがエラン様から語られているし、
教育事業の展開は、もう始まっているってことだよね。

「こっち(=地球)に『も』学校作るんでしょ?」
とスレッタがミオリネに言われていたことから、
アスティカシアの復興にはスレッタも関わっていた可能性があります。
教育事業についてのライバル……、というのは少し違うけれど、
お互いに同じ夢に向かっているのだとしたら、
それはとても幸せで素敵だなぁ、と思っています。
そして、その上で、もしもスレッタが教職に就くことに興味を持ったら、
応援したいなぁ、と思う。
人の役に立つことを素直に喜べるスレッタなら、
きっと、いい先生になれると思うよ。

パイロットとしての対戦履歴

グエルくんとスレッタの決闘は、全部で3回行われているものの、
グエルくんが万全の状態で戦ったことって、実はまだ一度もないのですよね。
  • 第1話……慢心
  • 第3話……AIの介入・ジェターク寮による妨害工作
  • 第17話……PTSD(&スレッタ側の強制停止・精神状態の異常)
せめて最終決戦くらいは、全力で共闘させてあげたかったなぁ、
そして、それを見たかったなぁ。
グエルくんはともかく、スレッタは本編軸だとこの先はMSの操縦は難しそうだから、
2人の本気対戦が夢物語になってしまったことが、ほんとうに悔やまれる。
こうなったらもう、せめて、夜の決闘くらいは思う存分して頂かないと
私の心が救われません。めそ。

まぁ、でも、この子たち、まだハタチそこそこくらいなんだよね?
そっかそっか、だったらまだまだ、未来なんてわかんないですよ。
アド・ステラにおける人類の平均寿命がどれくらいかは知らないけれど、
長い人類の歴史で例えたら、ハタチなんて「はじめ人間ギャートルズ」ですわ。
マンモス狩ってマンガ肉食っとるような時期ですわ。
そもそも、本編のスレッタちゃんは精神面がまだまだ幼いので、
これからもっと成長していく余地が十分にあると信じてる!
(データストーム汚染については、
 ベルメリアさんが特効薬か治療法を開発してくれることを期待)

いつか、グエルくんが会社を立て直した頃には
スレッタも彼の BIG LOVE を受け止められるくらいになっているだろうし、
そこから一気に関係が進む、というのもアリだと思います!
伝え聞くところによると、全校集会での彼はスレッタに進み続けているみたいなので、
それを受けてスレッタがさらに人間的にも成長するところを見守りたいです。

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