【最終回感想・6:罪と罰】「機動戦士ガンダム 水星の魔女」

 2023/07/29 Sat

水星の魔女

水星の魔女 いろいろあって、今週も界隈はざわついていたけれど、
自分はマイペースにこの「最終回感想」を続けます。
「今さら?」と言われそうだし、自分でもそう思うし、
今回の騒動を含め、「作り手側はそこまで考えてないっぽいな?」という疑惑が
ますます強まってくるばかりだけれど、言いたいことはまだまだあるので。

それにしても、全校集会、ちょっと心配だなぁ。
私は不参加ですが、行く方々にはめいっぱい楽しんできてほしいし、
ゲストやスタッフのみなさまにとっても、いい思い出になることを祈っています。

シャディク

さて、今回のテーマは「罪と罰」。
まずはシャディクさんについて語ります。

第22話のミオリネさんの「私を信じなさい!」がかっこよくて頼もしくて、
どんな「取り引き」をしたんだろう、とわくわくしていたのですが、
最終回(第24話)の内容から、こんな感じ(↓)だったのですよね?
  • ミオリネは、ベネリットグループを解体し、その資産を地球の企業に売却・合併
    (シャディクがグラスレー社でやっていたことを、
    総裁としてグループ全体の資産で執り行った)

  • シャディクは、プラント・クエタおよびその後の学園でのテロ行為に関して
    自身が首謀者であるという宣誓供述書を提出

  • さらにシャディクは、クワイエット・ゼロについても自身の罪とした

私、経営とか経済のこと、ほんとに疎くてちょっとアレなんだけど、
まず、疑問としては、総裁だからって勝手にグループ全体の資産を
売却できたりするんですか?
アホな質問だったらちょっと恥ずかしいのですが、でも、だって、
末端企業の社員のことまで考えると、ものすごい数の関係者に影響するよね?
そういうの、独断でできちゃうの? それが「総裁」?
例えば、グエルくんとか、ジェターク社の立て直しに協力するって話だったのに
さらに大変なことにしちゃってないですか??

まぁ、そこらへんの細かい事情はさておき、
「シャディクがやりたがっていたことを、もっと規模を拡大して決行した」
というのはわかります。

ただ、それに対して、ミオリネがシャディクにさせたのが、
「一連のテロに関する自供」ってことで、
それは確かに、シャディクがいろいろ手回ししたのは事実なんだけど、
クエタの件だけでも、ヴィムによるデリング暗殺計画とか、
サリウスがそれに乗っかったこととか、
彼以外の人間の思惑も絡み合っているのに、彼1人に背負わせているようで、
「取り引き」の内容がフェアじゃないと思っちゃうんだよね。

そもそも、シャディクがそこまで思い詰めた経緯である、
スペーシアンとアーシアンの経済格差問題その他について、
うやむやにされてしまった感が強くて、モヤッとしてしまう……。
そりゃあ、この短い話数の中で一気に解決できるわけがないと思っていたし、
「おれたちの真の闘いはこれからだ!」ENDになるんだろうな、
というのは予想していましたが、うーん……。

あとさぁ、これ、もう、あちこちで散々言われていることだけれど、
クワイエット・ゼロに関しては、シャディク、全然関係ないよね!?
シャディクがそう宣誓しちゃったとしても、
そこに気付いたら異議申し立てとか、しないの? できないの?
そういうのも含めて、これから詰めていく状態?
ごめんなさい、わからないよ……。

ただ、これに関しては、
「クワゼロの罪を被ることで、ミオリネの『大切な人』(=スレッタ)の
 家族(=エルノラ&エリクト)を守った」
「さらに、そうすることでミオリネに傷を残したかった(叶わぬ恋との決別)」
と考察されている方がいて、ああー、なるほど、とも思いました。
シャディク、そういう奴だよなぁ……。

……うーん、でも、それにしても、
「大人たち・親世代の罪を子どもが被る」っていう構図には、
単純に憤りを覚えます。
何なんだよ、それ! おかしいだろ!

このままいくと、シャディクは死刑か終身刑になりそうだけれど、
ミオリネはどうするのかな。
どうにかして、条件付きでも、彼を外に連れ出してあげることはできないのかな。

シャディミオ語り

彼らの出会いや過去がどんなものだったかは
本編中ではほとんど明かされていなかったけれど、
たぶんグエル&ラウダとともに、10歳前後には知り合ってたのかな、と推測。
(グエル&ミオリネは、それこそ物心ついた頃には顔合わせくらいはしていたかも。
 総裁の娘と、御三家筆頭の御曹司だから)

んで、おそらく当時から父親に交友関係をコントロールされていたミオリネにとって、
「自分と同じ知的レベルで会話できる同年代の相手」って
もしかしたらシャディクしかいなかったのかな、
それが彼に対する興味の始まりだったのかなぁ、って。
(ちなみにグエルくんも、お馬鹿ではないと思うのだけれど、
 特に幼少期はピュアすぎて(回想参照)、話が合わなかった可能性……)

「シャディクは、自分がミオリネにしたかったことを
 (=「ホルダーになって君を守る」)、グエルに託していた」
というのは作中でも描写されていましたが、さらに、これに対して、
「ミオリネは、自分がシャディクにしてほしかったことを
 スレッタに求めていた(&実際にさせていた)」
とする考察があって、その解釈にとても納得がいくと同時に切なくて、
この似た者同士のこんがらがった両片想いを、何とかしてあげたいな、
という気持ちでずっと視聴していました。

実らない初恋とか、悲恋とか、秘めた想いとかも大好きだけれど、
水魔女って、誰にも弱みを見せられずに生きてきたような子たちばかりで、
彼ら彼女らが心を開いた、その数少ないお相手とは、
どうか幸せになってほしいと願ってしまうんだよなぁ……。
私は未だに、シャディミオも諦められずにいます。

プロスペラ(エルノラ)&エリクト

彼女たちについては、「最終回感想・5:エルノラ&エリクト」にて
すでに語っているので、ここでは割愛します。
でも、何度も言うけれど、
プロスペラが罰を受けずに穏やかな余生を送っているような描写は、
物語上のけじめとしても、スレッタの自立という点においても、
大きな違和感を残すものになったと思っています。

デリング&サリウス

デリング、第12話で死んでてもよかったんじゃないかな?(いきなり暴言)
いやー、だって、死ぬかと思ったら生きてたから、
クワゼロとか、ノートレットとか、プロスペラとの出会いとか、
ヴァナディース事変の真相とか、
何かしらの新情報を与えてくれるのかと期待しちゃったじゃん。
あるいは、スレッタとの向き合い方に悩むミオリネに
不器用ながらもアドバイスしたりとかで、
子を想う父の姿を見せてくれるのかと思っちゃってたじゃん。
どっちもなかったですね。あれー……。

まぁ、それはともかく、エルノラをプロスペラという復讐鬼に変えてしまったのは
紛れもなくデリングですよね?
そしてまた、
「クワゼロの罪をシャディクが被っていることを黙認」イコール、
「プロスペラ(クワゼロの件の首謀者)に罰を受けさせない」イコール、
「デリング(ヴァナディース事変の首謀者)の罪も問わない」、
ってことになっちゃうんだよね。
そうすると、ミオリネの周辺だけ奇妙に守られたかたちになって、
これって、これって、許されるのか……? って思っちゃう。
ここも、最終回モヤッとポイントの1つだよなぁ。

百歩譲って、
「プロスペラの過去や罪を問うと、いずれは
 スレッタの出自(リプリチャイルド)についても世間に知られることになり、
 彼女を守るために、それを避けた」
と考えられなくもないけれど、うーん……。

そもそも、ミオリネ、
「誰かを犠牲にするのはもう嫌です」って言ってなかったっけ?
シャディクはその勘定に入ってないの?
無実の罪を被せるのって、「犠牲」ってことにならないの?

そして、サリウスおじいちゃん。
この人も、難しい立場になっちゃったけど、
プラント・クエタでのテロをシャディクに決意させた上に
それを黙認したわけだから、何らかの罪はあるんじゃないの?

一応、この2人については、
最終回のエピローグ部分で、ニュース映像として
クインハーバー&クワゼロの件で矢面に立っている(? 意訳)ことが
ちらっと流れているのだけれど、何か、こう、……。
水魔女はいつもなぜか、「ここはハッキリさせとこうぜ!?」みたいなのを
匂わせ程度で済ませてしまうところがあって、困っちゃう。
細かい英字の文面なんて、後でどなたかが指摘してネットに流してくれないと
気付くの難しいでしょうが! もう!!

ペイル社&ベルメリア

最終回リアタイ視聴時、あの4人組がお茶会(?)してるのにはびっくりでした。
強化人士なんて、倫理的に絶対ダメじゃないの?
だから今まで、「タケモトピアノは、いつかひどい目に遭わされるんだろうな」
とうっすら期待してもいたのだけれど、違うんだ……?
あ、いやいや、ペイル社はどうやら潰れちゃったっぽいし、
その意味ではタダでは済まされなかっただろうけれど。

それに、ベルメリアさんも。
個人的には人間くさくて嫌いになれないキャラですが、
この人の持ち込んだ技術で、強化人士が生まれたんですよね?
自分の研究成果を活かしたい、という、
ちょっとマッドサイエンティスト的な欲求もあったんじゃないかなぁ、
などと想像しつつも、やっぱりこの人の罪も大きいよ。
なのに、フェンさん(たぶん)のお墓参りをしていて、
それ自体はちょっとうれしかったけれど、何か、あれ? って……。
いや、もしかしたら、まだ審議中とかで拘束はされていないだけ、とか、
監視付きならある程度、自由に行動できている、って可能性もあるけれど。

……と、ペイル社関連の罪と罰についてもやもやしていたのですが、
「ミオリネが株ガンを立ち上げた時に
 『生命倫理問題は私と会社が引き受けます』と宣言しているから、
 強化人士の件はペイル社の責任ではなくなった」
と指摘している考察を拝見して、「あー!」って思いました。
あーあああー……、そういうこと……!?
うーん、納得いかないけれど、納得せざるを得ないような……。

ニカ

作中で唯一、自らの罪をきちんと精算したと思われるキャラクター。
きちんと、というか、おそらくは詳細を知らされないまま
「連絡係」をしていただけなのに、
刑期を終えるまでに3年(?)もかかったんだなぁ。
現代の司法的な基準はよく知らないし、
アド・ステラにおける常識も不明なままだけれど、
「けっこう長くかかっちゃうもんなんだな」とも思ってしまいました。

それに対して、学園内テロその他で実行犯だったはずのシャディク隊が、
ニカ姉出所時には、すでに、
ミオリネの護衛(兼秘書?)として働いている描写があったので、
リアタイ視聴時はその差にちょっと引っかかったりもしていました。

うーん、この違いは、シャディクが一切の罪を被って、
「彼女たちへの罰は軽くしてほしい」と願っていたのが
叶えられたということかな。
もしかしたら、ニカ姉とシャディク隊のこの違いは、
アーシアンとスペーシアンの扱いの差でもあったりする……?
(シャディク隊の女の子たちは、アカデミーから引き抜かれる時に
 養子縁組などでスペーシアンとしての身分を手に入れたと考えていますが、
 これも憶測になっちゃうのかな?)

ああ、でも、そうか、
ニカ姉はアスティカシアへ入学するために、
おそらくは戸籍や申請書類なんかも偽造しただろうから
(ソフィ&ノレアと同じく、ダミー会社からの推薦など)、
そういう、これまで彼女が人知れず抱えていたものも
全て明らかにして、償ってきたのかな。
だから、そこそこの刑期が求められたのかもしれないですね。

ノレアに暴力を振るわれても、サビーナに仲間に誘われても、
「手段は間違えたくありません」ときっぱり断ることができたニカは、
この物語において、数少ない希望の星になったと思います。
彼女のこの先の人生が、さらに豊かなものになりますように。

そうそう、出所した時のベリーショートなニカ姉は、とってもキュートでした!
前のも似合っていたけれど、すごく明るい雰囲気になったね。
以前はいろいろと後ろめたい気持ちが足を引っ張って、
ちょっと影を落としていたのだとしたら、
これからは本来の彼女らしく、
どんどん輝いて素敵な女性になっていってほしいです。

グエル

最後に、グエルくんについて。
言うまでもなく、彼の親殺し・ヴィム殺しの件です。
彼について思うことは、すでに「第17話:大切なもの」の時に書いたので、
ここではそちらからそっくり引用しますね。

そして、グエルくんは父殺しの件を、まだ誰にも、
ミオリネさんにも伝えていない。
「前CEOを新CEOが殺した」だなんて、大スキャンダルだし、
会社のイメージとか信用とか、ガタ落ちになることが目に見えてるから、
グエルくんは一生、自分の胸だけに隠していくつもりなのかな……。

ちょっとメタ視点の予想になってしまうけど、グエルくんは、
これだけ裏主人公的に丁寧に描かれている
(=人気が出ることを期待されている)キャラクターで、
未成年(結婚は可能だけれどまだ大人じゃないし、学生でもある)で、
若い世代、特にちびっこ視聴者も十分想定された「ガンダム」という作品で、
「罪」に対する「罰」や「報い」、あるいは「償い」を
曖昧にぼかしてすませるとは思えないんだよね。
そして何より、グエルくん自身は罰せられたがっているように感じるし、
だからこそ、あのPTSD発症だと思うわけで……。

「会社としては、公表はイメージダウン」
「キャラクターとしては、公表は救済にもつながる?」
「青少年向けの作品として、罪を隠して生きるヒーロー像はNG?」
っていう、この3つの落とし所をずっと考えているのだけれど、
私の脳みそではなかなかいい案が浮かばなくて、困っています。
ほんとうに、どうすんだ、これ。

彼の罪については、正当防衛にあたると思われるし、
「地球で捕虜になっていたことがミオリネに伝わっている」イコール
「そのきっかけとなった親殺しについても、ケナンジに伝わっている」、
という可能性もあり、すでに法的には処理済みなのかもしれません。

あるいは、水魔女らしく描写がすっ飛ばされただけで、
空白の3年間の間に公表や制裁などが行われたのかもしれません。

そしてまた、これも他者様のつぶやきで気付いたのですが、
「プラント・クエタに関する一切の罪をシャディクが被ったことで、
 グエルの親殺しも公的には抹消された」
という可能性もあります。

でも、VSシャディク戦で
「俺もお前も、自分の罪は自分のものだ」って言っていた彼が、
そんなこと、受け入れるかなぁ?
グエルくんに直接は影響のない、クワゼロの罪まで被った件だって、
もし知ったら、全力で抗議しそうにも思えるんだけどなぁ……。

グエルくん、学園の再建にも携わっていたみたいだし、
ジェターク社の社長業も引き続きがんばっているんだから、
変なタイミングで親殺しをスクープされるのは死活問題だと思うんだよね。
だから、彼の言動に一貫性を持たせるためにも、彼自身の救済のためにも、
クワゼロ収束後には、まずこの件について公表して、
禊を済ませておいてほしいと思うのだけれど……。
(あ、ここらへんについては感想というか願望も思いついちゃったので、
 (↓)「最終回感想・7:エラン・ケレス」にてまとめました)

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