水魔女再考・15:ガンプラPVとしての成否

 2024/09/17 Tue

水星の魔女

水魔女再考・15:ガンプラPVとしての成否

ホビーアニメとしての水魔女

「玩具やゲームの販売促進のために作られたアニメ」のことを
「ホビーアニメ」と呼びますが、
私はガンダムもこの一種だと思っています。
「ガンプラを売るための、手間暇かけてお金もかけたPV」、みたいな。
この認識が正しいかどうかはともかく、
今回はそういう解釈をもとにしたメモをちょろりと書いておきますね。

「ガンダムアニメ」=「ガンプラPV」という観点でいくと、
水魔女はあの出来で大丈夫だったのかなぁ。
私自身は、もともとメカやロボはけっこう好きだけれど、
ガンダムやガンプラ全般に対する知識は浅い、というライト層ですが、
わりと本気で、ちょっと心配……というか疑問です。
「MSを最大限魅力的に見せるぞ! めいっぱい活躍させるぞ!
 (そしてたくさん買ってもらうぞ!)」
っていう作り手側の熱意が、あんまり伝わってこないというか。

あ、MSのデザイン自体は、どれもかっこいいと思っていますよ。
企業ごとに異なるデザイナーさんに振り分けた、というのも、
素晴らしいアイディアだし、路線や個性の違いもしっかり出て、
その点については大成功だったよね。

ニチアサの場合

ここからは少し、補足として、ニチアサの話をさせて下さい。
私はニチアサ3大シリーズ(戦隊・ライダー・プリキュア)を
それなりに長いこと視聴しておりまして。
これらがホビーアニメであることは周知の事実だと思うのですが、
例えばプリキュアでは、変身バンクはどのシリーズのどのキャラも、
そりゃあ気合が入っていて、すごいのです。
過去に、それらのシーンの作画を担当された方が
「見ている子たちに、『私も変身したい!』と思ってもらえるように」
と熱い想いを語っていらっしゃいましたが、
「なるほど、わかる!」と納得がいくものでした。

また、ちょっと古い話ですが、戦隊のシリーズ何十周年記念か何かで、
私の地元にも大きな展示イベントが回ってきたことがあります。
実際に撮影で使われた小道具も並べられていて
(敵・味方の変身アイテムや武器など)、
「アクション用とアップ時用とで、それぞれ用意されている」
という事実もその時初めて知りました。
(最近はまた撮影事情が変わっているかもしれないし、
 全作品の全キャラがそうとは限らないとも思いますが)

私はとっくにそれらの作品のメインターゲット層からは外れているし、
作品ごとのモチーフや作風の違いなどで、
どハマりしたりそうでもなかったりするものの、
「このヒーロー/ヒロインは、こんなにかっこいいんだよ!」
を伝えようとする姿勢は、どの作品からもちゃんと感じられます。
そしてそれは、私がシリーズ全体のファンを長く続けている
主な動機の1つにもなっています。
最大の理由は、ただシンプルに
「毎年、それなりにおもしろいから」ですが。

東映も東映アニメーションも、そしてキャスト&スタッフ陣についても、
ここ数年はマイナス方面の話題がちょくちょく出てくるので、
全面的に肯定しているわけではないけれど、
末長く続いてほしいし、これからも応援していきたいです。

シュバルゼッテ

では、水魔女に話を戻します。
やっぱりこの作品、ガンプラPVとしては、ちょっと惜しかったよね。
私はもともと、MSだけを目当てにガンダムアニメを見てきたわけではないし、
水魔女も、他の方々からの指摘を目にするまでは特に気にならなかったのですが、
そもそも、MSの出番が少なかったよね。
これは一例ですが、ガンプラを嗜んでいる私の甥っ子が、ミカエリスのことを
「あんまり出番なかったから、名前、覚えらんない……」
と言っていた時は、ちょっと笑ってしまったけれど淋しかったです。

惜しかったと言えば、最大の被害者は、シュバルゼッテとキャリバーンだよなぁ。
もう何度書いたかわからないけれど、シュバルはあんな、
兄弟喧嘩に使われただけで終わるような子じゃなかったはずなんですよ!
だって、S1の頃からガンプラ情報だけは出ていませんでしたっけ?
(記憶違いだったらごめんなさい)
デザインを担当された形部さんも、
インタビューで熱い想いを述べられていましたが、
もっともっと、出演時間もその活躍も、
当初は全然違うものを想定されていたんだろうな、
と容易に想像できてしまって、悲しい。

S2は全体的にグダグダだったので、展開も二転三転しただろうと思われますが、
その皺寄せを一身に浴びたのがシュバルだったんじゃないかなぁ。
そして、それに乗ったラウダくんも、
巻き添えで最終的にわけのわからないキャラになってしまって、
可哀想だったなぁ、と思っています。
ついでに言うと、そのわけのわからなさをフォローするつもりなのか何なのか、
ラウダくんを「いろいろあったが自立し成長した男」として描くために、
その演出品として「両脚を失ったペトラ」を添えたことにも、
私はずーっと腹を立てています。

私はペトラちゃんの、
「ラウダ先輩のことが好き、
 彼がグエル先輩のことを最優先しても全然OK(むしろ望ましい)、
 それはそれとしてデートをすっぽかされたらムカつくし悲しい、
 絶対に埋め合わせはしてもらう!」
って言うところが大好きだったからさぁ……。
3年後のあのエピローグの彼らのシーン、
私のラウペト観からは著しくズレていて、びっくりしちゃったんだけれど、
私が読み違えていただけなんですかね……しょんぼり……。

おっと、またもや話がMSやガンプラから脱線してきちゃったぞ!
それに、ここらへんについては、前にもメモしていたような……、
あ、やっぱりしていましたね(→「最終回感想・8:グエル&ラウダ、ペトラ」)。
まぁ、言いたいことは何度言ったっていいよね。

赤いシュバルゼッテ

そうそう、シュバルゼッテといえば、
形部さんのインタビューで語られた、幻の赤ver.も話題になりましたよね。
今でも、赤く塗装したシュバルのお写真やイラストなどが度々流れてきて、
ありがたく拝見させて頂いております。どれも素敵!

この赤シュバルの情報が出てから、
「グエルくん&赤シュバル」派と「ラウダくん&白シュバル」派で、
対立とまではいかないものの、
若干、雰囲気が、こう……、ピリついた気配を感じた頃がありました。
(あくまで個人の体感です)

この件ですが、たぶん、仮に当初の予定どおり
「グエルくんが赤いシュバルゼッテに乗る」という展開が本編で見られたとしても、
「ラウダくんが白いシュバルゼッテに乗る、という案もあった」
とかいう裏話が公開されたりしたら、
きっと同じように赤vs白論争が繰り広げられていたのでは、と思います。

みんな、シュバルには注目していたし、期待もしていたんだよね。
あと、もうただ純粋に、シュバルの造形が美しいのと、
あのギミックのおもしろさとかっこよさで、
見た人はハートを撃ち抜かれちゃったんだよね。
あんなに短い出演時間にもかかわらず。

「パイロットの心身に負荷をかけるガンダム」
「兄弟喧嘩に使われただけで消滅」
「そもそもの開発の経緯がよくわからない」
という三重苦を背負ってなお、それなりに人気のMSなので、
本編での扱いがもう少しちゃんとしていたら、
ガンプラとしてももっともっと売上に貢献できたと思うんだけどなぁ。

……って、具体的な実績をよく知らないまま話しております。ごめんなさい。
いや、うん、今でもそれなりに売れているんだろうな、とは思うのですが、
もっとユーザーの裾野を広げることができただろうに、
もったいなかったよなぁ、と感じてしまっているので……。

キャリバーン

キャリバーンは、シュバルとは違って、
前情報はほとんどないまま本編に突然登場して、
スレッタが最後に乗ったMSです。
ラストバトル(あれをラストバトルと呼ぶならば)で主人公の相棒となるガンダム、
という点では、もっと人気が出てもいいはずだし、
そもそも、そのために脚本や展開ももうちょい工夫されてもいいものなのに、
一視聴者としての素直な感想としては、
「スレッタに障害を負わせたガンダム」という印象が大きすぎて、……。

「テンペスト」に倣って(?)「怪物」という名を与えられた、
曰く付きのガンダムなんて、ものすごくドラマティックな予感がするじゃん?
「スレッタがエアリアルに乗ってもピンピンしていたのは、
 エリクトの存在があってこそ」
と思われていたけれど、もしかしてスレッタ自身にも、隠された能力があるのでは?
それが発揮されて、「呪い」をクリアするのでは?
……と思っていた時期が私にもありました(遠い目)。

パーメットスコアを上げる、あのテスト段階ではダメっぽかったし、
キャリバーンとの「対話」も見せてもらえなかったけれど、
戦闘の最中に、突如覚醒しちゃったりして!
……とか、最後の最後まで一発逆転な展開を期待していましたが、
いやー、ぜーんぜんそんなことは起きませんでしたね!
もう、ただただ寿命を削るだけで終わっちゃいましたね……。
私、そもそも、スレッタがそこまでしてクワゼロに向かう理由とか、
そもそもクワゼロって結局何なのかとか、
そもそも、乗り込むだけならガンダムである必要なかったんじゃないか、とか、
あそこらへんは話についていけなくなっていたので、
キャリバーンにいまいち愛着を持てないんだよなぁ、今でも。

あ、でも、あの魔女の箒っぽく変形するのは、すっごく好きです!
可愛いしかっこいい!
ただ、でも、あの〜、エリクト=エアリアルとのバトルは、
ただ逃げ回っているだけだったよね?
それがとても、もったいなかったよなぁ、って。

「家族と戦うことを望まない、ただ止めようとする優しい子」
というスレッタの表現として、そう描かざるを得なかったのかな、
とは思うのですが、水魔女って全体的に、
女同士の本気のぶつかり合いを避けてるなぁ、という印象があります。
例えば第4話の、嫌がらせをしてきたモブ女子とかに対しては、
物理的にやり合ったりはしていますが、
親しい者同士の魂のぶつかり合い、みたいなのは皆無だった気がする。
向き合わず、一方的に言ったり言われたり、というのはあったけれど。

あっ、もしかして「母親なら平等に(云々)」はその類のつもりだったのかな?
でも、あれはミオリネがプロスペラに言う台詞としては、
根本的におかしいので、名シーンでも名台詞でもないでしょ?
「平等に愛せなくした張本人」である加害者の娘が、
被害者に向けて非難する、って、意味がわからないし。

わわわ、また脇道に逸れちゃった!
えーと、そうそう、キャリバーンvsエアリアルですが、
「不慣れで負荷のかかるMSで、家族のように共に在った愛機と対峙する」
と書くと、めっちゃワクワクさせられるのに、
実際にはあんまり盛り上がらないままで、シュワシュワしちゃったので、
これまたとても残念で、惜しかったですよね。

エアリアル

物語の序盤では、
「戦争モノではない代わりに、毎回のように決闘をするのかな」
と思っていたけれど、そうではなかったし、
主人公であるはずのスレッタは、
途中からすっかり「温室の囚われの姫」になってしまいました。
その分、内面描写に重きを置いていたのなら、それはそれでアリだけれど、
そうでもないまま終わってしまったのは、ほんとうに謎。
スレッタが、「ガンダムアニメの主人公」どころか、
「物語の主人公」としてさえ扱われていなかったのは、とても悔しいです。
私はスレッタを応援する気持ちで視聴を続けていたので。

「パイロットとして活躍すること」は「ガンダムアニメの主人公」であることの
必須条件ではないのかもしれませんが、
パイロットとして設定されている上に、その愛機が「呪われたガンダム」なら、
その呪いに向き合い、解決に向けて動き出すキャラクターとして
きちんと描いてほしかったです。

それに、スレッタの素のパイロット技能が実際どういうものだったのか、
最後までよくわからなかったのは、やっぱりちょっと、モヤッとするなぁ。
ネット上では周期的に話題になっているけれど、
エアリアルという機体がすごいのか、
エリクトというフィルター&サポートがあってこそなのか、
それとも、純粋にスレッタ自身の技量によるものなのか、
結局よくわからないままでしたよね。

この件と並行して、例えばグエルくんのパイロットとしての成長を述べたりすると、
「グエルを持ち上げたいだけなんだろう」
といったアンチの方(?)のコメント(?)が付けられたりして、
何だかピリピリした空気になっちゃう、みたいな流れを何度も見ていますが、
別に、作中でのランキングを明確にしたいわけではないですよ。
もちろん、番組の視聴者層は幅広いので、そう望む人も一定数いるとは思うけれど、
水魔女はとにかくMSシーンが少ないせいで、検証材料が少なすぎて、
強さの比較が難しいですよね。

だからせめて、パイロットそれぞれの個性とか、長所や短所を知りたいな、
戦い方の癖とか、そういうのをもっと見せてほしかったなぁ、と思います。
そうやって、パイロットとその愛機の結びつきをもっと印象付ければ、
ガンプラの売上にも大きくプラスに影響していったと思うのですが、
どうなんだろう、もしかしてあんまり関係ないのかな?

私はエアリアルという機体自体にも愛着は持っているけれど、
それは、序盤を見ていた頃のワクワク感とか、「祝福」という楽曲&PVの存在、
そして「ゆりかごの星」での描写から膨らませたイメージに起因するもので、
いわば、初期の「貯金」だけ、なのですよね。
普通は、最終回に向かって、少しずつ愛着が深まるものだと思うのですが、
ちょっと、そういう点でも、想定外だったなぁ。

ホビーアニメとしてのノルマ

私の実家ジャンルや、その他、お気に入りだったいくつかの作品は「ホビーアニメ」で、
具合的な数値は不明ですが、
「玩具の売上がいまいちで打ち切りになった」と聞いています。
その他、玩具ありきで設定や展開が練られたりするという事情も、
全てのホビーアニメに該当するかはわかりませんが、ちらほら耳にしています。

そんな知識がうっすらとあるので、
水魔女のような、あまりにもMSの扱いが雑な「ガンダムアニメ」が、
全くもって不可解です。
脚本とか展開とか、随時、ガンプラ部門とかからチェックが入ったり、しないのかな?
だって、タイミングを合わせてガンプラを売るには、
もろもろの擦り合わせって、絶対必要だよねぇ?

それに、ガンダムアニメって、グッズにしろ派生作品にしろ、
そのコンテンツを少しでも長く活かす方針なのだと思っていますが、
もしかして、これも私の勘違いなのかなぁ。
例えば、その作品が、アニメとしての評価がいまいちだとしても、
MSやキャラの人気が一定ラインを保っていられれば、
ガンプラやグッズなど、そこをターゲットにして商売が成り立つわけだから、
アニメ制作サイドとガンプラ(&グッズ)部門は二人三脚の間柄、
と思っていたのですが、実際どうなんでしょうか。

「MS目当てでガンダムアニメを見ている」という層は、
たぶん昔からそれなりにいらっしゃるのだと思う。
そういう人たちにとって、水魔女は、
ガンプラPVとしてどれくらい評価されているのかな。
ちょっと聞いてみたいような、知りたくないような、揺れる思いです。

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