水魔女再考・16:決闘と花嫁

 2024/10/28 Mon

水星の魔女

水星の魔女

まえがき

夏からBSで水魔女の再放送が始まったので、
本放送時以来、ものすごーく久しぶりに、全話をきっちり見返しています。
そして、見れば見るほど、
脚本&展開の不自然さがレンブラン親子に集中しているなぁ、
と改めて思わされています。

「ミオリネの悪口を言うな」と怒る人たちは多いし、
彼女があまりにも叩かれるのは、ちょっと可哀想に思うけれど、
実際のところ、彼女の言動は作品の歪みやねじれの象徴にもなっていますよね。
「水魔女という作品全体に対する疑問点」を語ろうとすると、
「ミオリネというキャラクターに対する疑問点」に収束してしまうので、
完全に区別するのは難しいなぁ、って。

ほんとうに、脚本の最大の犠牲者だよ、あの子は。
わりと最近の公式イラストの、おそらく田頭さんの描かれたミオリネは
(女子でガンプラ作ってるのと、SEEDとのコラボのアレ)、
柔らかな笑顔でとっても可愛いけれど、
本編の言動を知っている身としては、「えっ、誰?」って思っちゃう。

キービジュとか、OP&EDとか、あのイラストの彼女しか見たことがなければ、
私も「へー、この2人、結婚したの? 可愛いじゃん」と思っていただろうなぁ。
今はもう、「これ大丈夫? 詐欺って訴えられない?」と心配になっちゃうよ。

デリングの真意

まえがきが長くなってしまいましたが、
今回は「決闘と花嫁」についてメモしておきます。
設定自体が途中で変わったり忘れ去られているような気配も感じるので、
今さらあんまり細かいことをつついても仕方ないかな、
という気持ちもありますが、とりあえず。

えーと、そもそも、
「決闘」=「エアリアルの最適化にベストな環境」(第14話)で、
参加者(パイロット&その関連企業)を増やすための餌として、
デリング総裁が娘を「ホルダーのトロフィー」として差し出した、
っていう認識で合ってます……よね……?

「力のある人間に嫁がせれば、いちばん安全だとでも考えたんでしょ」
とミオリネは解釈していましたが(第15話)、
これ、言い方はアレだけど勘違いというか、まるっきり見当違いじゃないかなぁ。
プロスペラから直接、
エアリアルのスコア上げのための決闘制度だということを聞いていて、
さらにラジャンからも、
「ノートレット様の創案は、総裁にとって希望でした」(第15話)
と聞かされて、その感想がどうして
「お父さんは、私を守るために強いパイロットを探していたのね(意訳)」
になっちゃうんだろ?
「父からの不器用な愛情表現」ではなくて、
あなたは客寄せパンダとして、親に利用されていただけではないの?
むしろ怒っていい、というか怒るべきなのでは?
本放送時も、このあたりからこの親子、
というかこの一家のことがわからなくなってしまって……。

第2話で、エアリアルがガンダムだということでスレッタが拘束された時、
デリングはミオリネを退学させて、
結婚相手も別のところで見繕うつもりだったんでしょ?
あれって、ミオリネが決闘のやり直しを要求しなかったら、
そのままトロフィー扱いからも解放されていたわけだし。
それとも、デリング&プロスペラは、
そこまで見越して審問会(だったっけ?)で茶番をしてみせたの?
ほんっと、このへん、わっかんないわぁ〜。

まぁ、たぶん、この2人の黒幕の行く末についてしっかり固めないまま、
途中で何度も路線変更して、勢いだけで進めて行っちゃった結果、
矛盾や齟齬があちこちで発生してしまったのだろうなぁ、
などと想像しておりますが。

「家族になるんだから」

そういえば、第1話を久しぶりにきちんと見返して思い出したのですが、
温室にグエルくんたちが来たのって、
「ミオリネをジェターク寮の一員(=家族)にして、管理下に置くため」
だったんだよね。

ミオリネがプロスペラに対して発した
「私たち、家族になるんだから」(第23話)には、
あの時の彼と同じような、自分に従わせるための横暴さを感じて、
あんまり好きになれないんだよなぁ。
家族になったからって、自動的に愛情が湧くわけではないと思うのですが、
「両親からの愛情に恵まれていたミオリネ」が
「自分の父(=デリング)の行いの結果、人生を狂わされたプロスペラ」に対して、
わざわざこの台詞を言わせた製作陣の意図が、未だによくわからない……。

「ラヂオの時間」?

水魔女が最終的に「何を言いたいのかよくわからない話」になってしまったのは、
私の個人的な好みや感性とのズレもあると思うけれど、
あまりにもライブ感重視で作っちゃったせいでもあるのではないかなぁ。

他のみなさまからも未だに指摘されているし、
このブログでも何度書いたかわからないけれど、
とにかくクワイエット・ゼロ周辺のことが、あまりにもわからなさすぎる。
デリングとプロスペラが、いつ、どこで手を組んだのか、
デリングが目指していた活用方法は、具体的にどんなものだったのか、
エアリアルをトリガーとして利用できることは、どうやって知ったのか、
ぱっと思いつくだけでも、こんな基本的なことが不明なまま終わるなんて。

……と、製作陣に言いたいことはたくさんありますが、最近は、
「もしかすると、現場の雰囲気は『ラヂオの時間』みたいな感じだったのかな」
と思うようにもなっています。

「ラヂオの時間」

(↑こちらは舞台版で、映画版ではないようです)
三谷幸喜による有名な作品ですが、一応、簡単にご紹介しますと、
「公募で脚本が採用されたラジオドラマが、生放送で演じられるが、
 出演者のわがままやスタッフの思惑により、設定や展開がどんどん変えられていく」
というお話です。
過去に見た時は楽しめたけれど、
水魔女でいろいろ経験を積んでしまった今では、
見ると微妙な気持ちになってしまいそう……。

おっと、水魔女に話を戻しますね〜。
そもそも、ラストを「みんなで考えた」って時点でおかしいですよね。
普通、ラストを決めて、そこへ向かってキャラを動かしていくのではないの?
それなりにキャリアのある方々が集まって作られたはずなのに、
あんなにグダグダになってしまったのは何でなんだろうなぁ。

あと、どうやら製作陣の中でも、
いろいろ擦り合わせができていなかったっぽいな、とも感じます。
それぞれ、お気に入りのキャラがいたりする分には別に全然、いいのだけれど、
「作品内でのそのキャラの扱い(=物語上の意味)」も、
脚本や演出担当の方々それぞれで、認識の差があったように感じます。

まぁ、でも、解釈は人それぞれですからね。
気に入ったところだけこれからも温め続けていけばいいかな、の気持ち。
できればもうちょっと、一貫した物語を楽しみたかったけれど、
今や日本のアニメ業界では、シナリオ(原作)不足どころか、
深刻な人手不足・後継者不足なのかもしれないし、
あんまり責めるのも可哀想な気がしてきちゃったなぁ……。

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